【2026年度】最低賃金が全国で引上げ|企業が確認すべきポイントと対応を解説
2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金について、47都道府県すべての地方最低賃金審議会の答申が出そろいました。
答申された改定額の全国加重平均は、前年度の1,121円から56円引き上げられ、1,177円となりました。
最低賃金が引き上げられると、企業は「現在の給与が最低賃金を下回っていないか」を確認するだけでなく、必要に応じて賃金の見直しや人件費の試算、従業員への労働条件の明示などを行う必要があります。
この記事では、2026年度の最低賃金改定のポイントと、最低賃金の計算方法、企業が確認しておきたい実務対応について、社会保険労務士法人がわかりやすく解説します。
2026年度の最低賃金はいくら?
2026年度は、47都道府県すべてで最低賃金の引上げが見込まれています。
答申された改定額の全国加重平均は1,177円で、前年度の1,121円から56円の引上げとなりました。
地域別では、答申時点で最高額が東京都の1,280円、最低額が宮崎県の1,085円となっています。
最低賃金の発効日は都道府県によって異なるため、事業所が所在する都道府県の最低賃金額だけでなく、「いつから新しい最低賃金が適用されるのか」についても確認しておくことが重要です。
なお、最低賃金額や発効日は、必ず各都道府県労働局などが公表する最新情報をご確認ください。
最低賃金制度とは?
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者にその金額以上の賃金を支払うことを義務付ける制度です。
最低賃金は、原則として正社員、契約社員、パート、アルバイトなど雇用形態を問わず適用されます。
仮に会社と従業員の双方が最低賃金を下回る賃金額で合意していたとしても、最低賃金額に満たない部分については法律上無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとして扱われます。
また、地域別最低賃金以上の賃金を支払わなかった場合には、最低賃金法により50万円以下の罰金が科される可能性があります。
最低賃金の計算に含まれる賃金・含まれない賃金
最低賃金を確認するときは、単純に「毎月の総支給額」を労働時間で割ればよいわけではありません。
最低賃金の対象となるのは、基本的に毎月支払われる基本給や諸手当ですが、最低賃金の計算から除外される賃金があります。
最低賃金の計算から除外される賃金
- 慶弔手当など、臨時に支払われる賃金
- 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 時間外労働に対して支払われる賃金
- 休日労働に対して支払われる賃金
- 深夜労働に対する割増賃金
- 精皆勤手当
- 通勤手当
- 家族手当
これらを除外したうえで、1時間あたりの賃金額を算出し、適用される最低賃金以上となっているかを確認します。
なお、最低賃金の対象となるかどうかは、単に手当の名称だけでなく、実際にどのような目的・条件で支給されているかによって判断されます。
最低賃金の計算方法
最低賃金を下回っていないか確認するためには、賃金を1時間あたりの金額に換算して比較します。
時給制の場合
時給額 ≧ 最低賃金額
時給制の場合は、設定されている時給額と最低賃金をそのまま比較します。
日給制の場合
日給額 ÷ 1日の所定労働時間
日給額を1日の所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金を算出します。
月給制の場合
月給額 ÷ 1か月平均所定労働時間
最低賃金の計算対象となる月給額を、1か月平均所定労働時間で割って確認します。
歩合給の場合
歩合給 ÷ 当該賃金算定期間における総労働時間
複数の給与形態を組み合わせている場合には、それぞれを時間額に換算したうえで合算し、最低賃金と比較します。
最低賃金の計算例
たとえば、基本給が日給9,000円、資格手当が月額20,000円で、年間所定労働日数240日・1日の所定労働時間8時間の場合を見てみましょう。

このケースでは、基本給と資格手当をそれぞれ1時間あたりの金額に換算すると、合計1,250円となります。
この1,250円と、その従業員に適用される最低賃金額を比較し、最低賃金を下回っていないかを確認します。
最低賃金の減額の特例許可制度とは?
最低賃金には、一定の場合に都道府県労働局長の許可を受けることで、個別に減額の特例が認められる制度があります。
対象となる可能性があるのは、主に次のような方です。
- 精神または身体の障害により著しく労働能力が低い方
- 試の使用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち、一定の要件を満たす方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
ただし、これらに該当するからといって、会社の判断だけで最低賃金を下回る賃金を設定できるわけではありません。
所定の要件を満たしたうえで、都道府県労働局長の許可を受ける必要があります。
減額の特例を検討する場合は、事前に管轄の労働基準監督署などへ確認することをおすすめします。
最低賃金の引上げで企業が対応すべき3つのこと
最低賃金が改定された場合、企業では給与額の確認だけでなく、関連する人件費や労働条件についても確認しておく必要があります。
1.最低賃金を下回る従業員がいないか確認する
まずは、従業員ごとに1時間あたりの賃金を算出し、新しい最低賃金を下回っていないか確認しましょう。
特に、最低賃金に近い水準で給与を設定しているパート・アルバイトだけでなく、月給制の従業員についても確認が必要です。
最低賃金を下回る場合には、発効日までに最低賃金以上となるよう賃金を見直します。
賃金額を変更する場合には、労働条件通知書や賃金改定通知書などを利用して、変更後の賃金額を従業員へ明示しておくとよいでしょう。
2.人件費への影響を試算する
賃金を引き上げると、給与そのものだけでなく、一定の場合には労働保険料や社会保険料などの会社負担にも影響します。
対象となる従業員が多い企業では、最低賃金の改定によって人件費がどの程度増加するのか、事前に試算しておくことが重要です。
3.賃上げに活用できる支援策を確認する
最低賃金の引上げに伴って賃金を見直す場合には、国などが実施する支援策を利用できる可能性があります。
たとえば、一定の要件を満たす中小企業・小規模事業者については、業務改善助成金などを活用できる場合があります。
そのほかにも、賃上げ促進税制や各種補助金・融資制度などがありますので、自社が利用できる制度がないか確認しておきましょう。
2026年度の最低賃金改定に関するよくある質問
Q.最低賃金はパートやアルバイトにも適用されますか?
A.原則として適用されます。
最低賃金は、正社員だけでなく、パート・アルバイトなどを含むすべての労働者に原則として適用されます。
Q.月給制なら最低賃金は関係ありませんか?
A.月給制の従業員も確認が必要です。
最低賃金の計算対象となる月給額を1か月平均所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金額を算出して最低賃金と比較します。
Q.通勤手当を含めれば最低賃金を超える場合は問題ありませんか?
A.通勤手当は最低賃金の計算から除外されます。
そのため、通勤手当を含めた総支給額ではなく、最低賃金の計算対象となる賃金だけで判断する必要があります。
Q.最低賃金を下回っていた場合はどうなりますか?
A.最低賃金との差額を支払う必要があります。
また、最低賃金法違反については罰則が定められているため、改定後の最低賃金を下回らないよう事前に確認しておくことが大切です。
最低賃金改定に向けて早めに給与の確認を
2026年度も全国で最低賃金の引上げが予定されています。
企業では、改定額を確認するだけでなく、従業員一人ひとりについて最低賃金を下回っていないか確認し、必要に応じて賃金の見直しや人件費の試算を行うことが重要です。
特に月給制の場合や複数の手当を支給している場合は、「どの手当を最低賃金の計算に含めるのか」「1か月平均所定労働時間をどのように計算するのか」など、判断に迷うケースもあります。
最低賃金への対応や給与計算、賃金制度の見直しなどでお困りの場合は、クルーズ社会保険労務士法人までお気軽にご相談ください。
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