健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 厚生年金保険70歳以上被用者不該当届について
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届とは
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」は、従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が死亡や退職、契約内容の変更等によって、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を喪失した際に、事業主が所轄の年金事務所に提出しなければならない届出となります。
また、厚生年金保険は70歳になると被保険者資格を喪失する関係で、70歳以上の従業員が、死亡、退職した際、あるいは契約変更によって標準月額報酬が変更されて不該当になる(厚生年金保険の加入要件を満たさなくなる)際にも、同一の書式である「厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」を提出することになります。
つまり、社会保険に加入していた従業員が、なんらかの理由でその資格を失った場合に提出するのがこの届出です。
提出についての詳細
<提出先>
実際に事業を行っている事業所の所在地を管轄する年金事務所。または健康保険組合・厚生年金基金。
<提出期限>
資格を喪失した日から5日以内
<添付・確認書類>
●組合管掌健康保険の被保険者の場合
→特になし
●全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者
→①健康保険被保険者証(本人分および被扶養者分)
②(交付されている場合のみ)高齢受給者証、健康保険特定室病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証
※紛失した場合は「健康保険被保険者証滅失届」を添付してください。
※万一従業員が健康保険証を提出しない場合、督促しても回収できない場合は「健康保険被保険者証回収不能届」を添付してください。
●60歳以上の方が、退職後1日の間もなく再雇用さいれた場合(この場合は、同時に同日付の資格取得届の提出も必要です)
→以下の①と②の両方、または③を添付してください。
- 就業規則、退職辞令の写し(退職日の確認ができるものに限る)
- 雇用契約書の写し(継続して再雇用されたことが分かるものに限る)
- 「退職日」および「再雇用された日」に関する事業主の証明書
<提出者>
事業主
被保険者資格の喪失や、資格切り替えの際の留意点
厚生年金保険の資格を取得した月の月末以前にその資格を喪失した場合でも、その月の厚生年金保険料の納付は必要になりますのでご注意ください。
被保険者負担分の厚生年金保険料は退職時に給与から控除し、会社(事業所)が会社負担分と被保険者負担分を翌月末までに納付する形になります。
ただし、厚生年金保険の資格を取得した月にその資格を喪失した場合でも、再度その月に厚生年金保険の資格、または国民年金(第2号被保険者を除く)の資格を取得した場合は、先に喪失した厚生年金保険料の納付は不要です。
この際、先に納付してしまった不要な分の厚生年金保険料につきましては、年金事務所から対象の事業所宛てに還付されることになります。事業所は、厚生年金保険料の還付を受け取った後は、速やかに控除していた被保険者負担分を、対象の元被保険者へと還付しましょう。
資格喪失後の保険給付について
健康保険の保険給付は、原則として被保険者に行われるものです。しかし、退職などで被保険者資格を喪失した場合でも、一定の条件のもとで保険給付が継続されます。(任意継続)
任意継続のための条件は以下のと
- 保険給付を受けている方が資格を喪失した場合(継続給付)
資格を喪失した日の前日までに継続して1年以上被保険者であった方は、資格喪失時点で受けていた傷病手当・出産手当を引き続き受けることができます。
- 資格を喪失した後に保険給付を受ける事由が生じた場合
- 傷病手当金(給付開始後歴月で1年6カ月)
- 出産手当金(喪失日前に受給権がある場合)
- 出産育児一時金(喪失後6カ月以内の出産)
- 埋葬料(費)(喪失後3カ月以内の死亡)
この際には1年以上の継続した被保険者期間という要件は不要になります。
ただし、75歳になると健康保険の被保険者資格を喪失しますので、原則として全ての被用者保険の適用対象外となります。
70歳到達届が届いたら
厚生年金保険は70歳の誕生日前日に被保険者資格を喪失するため、その日までに年金事務所から「70歳到達届」と印字された書式が届きます。その際、以下の2つの要件の両方に該当する方が在職中に70歳に到達した場合、日本年金機構が厚生年金保険の資格喪失処理および70歳以上被用者該当処理を行うため、事業主からの70歳到達届の提出は不要となります。
- 70歳到達日以前から適用事業所に使用されており、70歳到達日以降も引き続き同一の適用事業所に使用される被保険者。
- 70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前後における標準報酬月額と同額である被保険者。
※標準報酬月額相当額は、月給、週給等、一定期間によって報酬が定められている場合は、70歳到達日時点の報酬額を、その期間の総日数で除し、これにより得た額の30倍に相当する額を報酬月額として算出を行います。
提出期限に注意! 忙しい方は専門家へご依頼ください
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」の提出において、事業者が最も気を付けなければならないことのひとつは、その提出期限です。届出の提出期限は資格喪失日から5日以内となっていますから、退職が予定されている従業員には、退職日までに健康保険被保険者証を返還してもらうようにしましょう。
また、先に解説した通り、健康保険に1年以上加入していた人には、被保険者の資格喪失後にも一定の保険給付が行われますので、従業員の退職が決まった際には、健康保険証の返還をお願いすることとあわせて、様々な相談に応じるようにしましょう。
従業員としっかり退職に関するコミュニケーションを取ることは、スムーズな手続きの進行にも大切なことです。
とは言え、通常の業務をこなしながら、従業員の退職手続きを行うことは大変です。業務を効率化し、事業所の生産性を高めるという観点においても、各種届出の作成や申請手続きなど、労務を全て専門家へ委託するという選択肢は、非常に効果的な対策だと言えるでしょう。
クルーズ社会保険労務士・行政書士事務所では、給与計算や従業員の入退社における各種手続きなどを全て承っております。顧問社労士のご相談も随時受け付けておりますので、いつでもお問合せください。
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(監修:社会保険労務士・尾形達也)