健康保険被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届ついて
従業員(被保険者)の被扶養者に異動があったときに提出する届出
「健康保険被扶養者(異動)届」とは、新たに健康保険の被保険者になった従業員に被扶養者がいる場合や、既に健康保険の被保険者である従業員が新たに被扶養者を有するようになった際、またはそれまで有していた被扶養者の削除・氏名変更などがあった場合に、事業主が年金事務所へ提出しなければならない届出のことです。
例えば被保険者である従業員が結婚したり、子供が産まれた際にこれを提出しますが、逆にそれまで被保険者の被扶養者であった人間が死亡や就職した(自ら健康保険に加入した)場合等にも、同様にこの届出の提出が必要になります。
また、同一書式となる「国民年金第3号被保険者関係届」は、厚生年金の被保険者である従業員が被扶養者を新たに有した場合、削除・氏名変更があった場合、あるいは被扶養者が第3号被保険者ではなくなった場合などに提出するものであり、一般的には「健康保険被扶養者(異動)届」と一緒に提出されます。
この記事では、被扶養者になれる人の範囲やその詳細、「健康保険被扶養者(異動)届」「国民年金第3号被保険者関係届」の提出に必要な書類、提出期限、提出先などを解説していきます。
被扶養者の範囲
健康保険では、業務外の事由による被保険者の怪我や病気、死亡、出産に対して保険給付がなされ、またその被扶養者に対しても、同様の保険給付が行われます。そのため健康保険は、被保険者の被扶養者に関してその範囲を定めています。
被扶養者とはそもそも「扶養される者」を表す言葉ですから、まず前提として生計維持関係にあることが必要です。生計維持とはつまり、被保険者がおおよそ家計の半分以上を負担していることが目安となります。
それを踏まえて、被扶養者の範囲に入るのは以下のような人となります。
(1) 被保険者と同居していなくとも被扶養者の範囲に入る人
・配偶者(内縁関係も含む)
・子、孫、および兄弟姉妹
・父母、祖父母等の直系尊属
(2) 被扶養者と同居していることを条件に被扶養者の範囲に入る人
・上記(1)以外の三親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者等)
・内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死亡前から同居し、死後も引き続き同居していること)
(3) 上記(1)または(2)の要件を満たす者で、日本国内に住所を有している人
※令和2年(2020年)4月1日より、被扶養者の認定基準に「国内に居住していること」が新たに加わりました。
※また、日本国内に居住している人の場合でも、日本国籍を有しておらず、「特定活動(医療目的)」「特定活動(長期観光)」で滞在する人については、被扶養者の対象とはなりません。
※「外国に留学をする学生」や「外国に赴任する被保険者に同行する人」などは、日本国内に居住していない場合でも、特例的に被扶養者に認定される場合があります。
この時、例え上記の要件に当てはまっていたとしても、75歳以上の人は後期高齢者医療制度により、被扶養者にはなれませんのでご注意ください。
また上記の要件に加えて、もし被扶養者に収入がある場合は、60歳未満は年間収入が130万円未満、60歳以上の人と一定の障害者は180万円未満である必要があります。
さらに、被保険者と同居している被扶養者に収入がある場合は、年間収入が被保険者の収入の二分の一未満であること。被保険者と別居している被扶養者に収入がある場合は、年間収入が130万円未満(または180万円未満)であることに加えて、その収入が被保険者からの援助額よりも少なくなければなりません。
国民年金第3号被保険者とは
公的年金制度の対象者は、「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類に分けられています。それぞれの定義は以下の通りです。
・第1号被保険者
日本国内に住む20歳以上60歳未満の自営業、農業・漁業者、学生および無職の人間とその配偶者(第3号被保険者を除く)
・第2号被保険者
厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員(65歳以上の老齢基礎年金の対象者を除く)
・第3号被保険者
第2号被保険者に扶養されている配偶者で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の人間
つまり、厚生年金の被保険者である会社員や公務員に扶養される、年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の被扶養者のことを「第3号被保険者」といい、被保険者が結婚・出産をして新たに「第3号被保険者」ができた時(該当)、被保険者の被扶養者が「第3号被保険者」でなくなる時(非該当または変更)に出さなければならない届出が「国民年金第3号被保険者関係届」ということです。
健康保険被扶養者(異動)届・国民年金第3号被保険者関係届の提出について詳細
<提出先>
事業所の所在地を管轄する年金事務所
<提出期限>
異動があった日から起算して5日以内
<添付・確認書類>
①続柄確認のための書類
被扶養者の戸籍謄(抄)本。または、住民票の写し(被保険者が世帯主で、被扶養者と同一世帯である場合のみ)
ただし、次のいずれかにも該当するときは、続柄確認のための添付書類を不要とすることができます。
・被保険者と被扶養者(扶養認定を受ける者)の、双方のマイナンバーが届出書に記載されていること。
・上記の書類により、被保険者と被扶養者(扶養認定を受ける者)の続柄が届出書の記載と相違ないことを事業主が確認し、その旨を記載していること。
②収入要件確認のための書類
(1) 所得税法の規定による控除対象配偶者または扶養親族となっている者
→事業主の証明があれば添付書類は不要。
ただし被保険者の税法上の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、所得税法上の控除対象配偶者の適用は受けられないため、収入確認の証明書類が必要です。また、被扶養者になった日が、年金事務所の受付日より60日以上遡及する場合は、扶養の事実を確認できる書類の添付が必要となります。
(2) (1)以外の者
・退職したことにより収入要件を満たす場合
→退職証明書または雇用保険被保険者離職票の写し
・雇用保険失業給付受給中の場合、または雇用保険失業給付の受給終了により収入要件を満たす場合
→雇用保険受給資格者証の写し
・年金受給者
→年金振込通知書の写し
・自営(農業等含む)による収入、不動産収入等がある場合
→直近の確定申告書の写し
※自営業者についての収入額は、当該事業遂行のための必要経費を控除した額となります。
(3) その他、障害年金、遺族年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付金等の非課税対象となる収入がある場合は、受取金額のわかる通知書等の写しも別途添付が必要になります。
③仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類
被保険者と被扶養者が別居している場合のみ、送金者名、受取人名、その金額が確認できる以下のような書類の添付が必要です。
・振込の場合 → 預金通帳の写し(通帳の名義・振込日・金額のページ)、振込明細書等
・現金の送金の場合 → 現金書留の控え
※被扶養者が16歳未満または16歳以上でも学生の場合は不要です。
④内縁関係を確認するための書類
・内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本
・被保険者の世帯全員の住民票(コピー不可)
※住民票や戸籍謄(抄)本は、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを提出してください。
※被保険者と扶養認定を受ける者との同居の確認は、日本年金機構で行うため、原則、書類の添付等は不要です。ただし、同居の事実が確認できなかった場合においては、住民票の提出を求める場合があります。
⑤死亡や就職など被扶養者の削除を確認するための書類
・死亡時 → 死亡診断書または埋葬許可証の写し
死亡した被扶養者の保険証
・就職時 → 被扶養者だった者の新しい保険証のコピー
・離婚時 → 離婚受理証明書または戸籍謄(抄)本
<提出者>
事業主、または被保険者が事業主を経由して提出
<届書記載時の注意事項>
・届出書の『被扶養者になった日』欄への記入年月日は原則として以下の通りです。
(1) 被保険者資格取得届と同時に提出する場合 → 資格取得日
(2) 出生の場合 → 出生年月日
(3) 婚姻の場合 → 婚姻年月日
(4) 退職の場合 → 退職年月日の翌日(資格喪失日)
その他の理由の場合は、それぞれの事柄の発生日を記入してください。
・届出書の『被扶養者でなくなった日』欄への記入年月日は原則として以下の通りです。
(1) 就職の場合 → 就職年月日
(2) 死亡の場合 → 死亡年月日の翌日
(3) 離婚の場合 → 離婚年月日
・届出書において被保険者本人の署名・押印は、事業主が被保険者本人の届出の意思を確認し、届出書の備考欄(または被保険者欄「住所」欄下部の余白)に「届出意思確認済み」と記載した場合は省略することが可能です。(電子申請の場合は「届出意思確認済み」のチェックボックスをチェックしてください)
ただしその場合も、届出書の「氏名」欄につきましては記入が必須となりますのでご注意ください。
手続きに不安がある際はご相談ください
長く働いてもらっていればいるほど、従業員それぞれを取り巻く状況が変化していく事は、当然の流れです。結婚や出産、または子供の一人立ちや家族との別離などがあれば、その都度、従業員(被保険者)の被扶養者関係は変わっていくものでしょう。
そんな時に事業主に求められるのは、そういった従業員の状況に合わせて、速やかに「健康保険被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届」を提出し、対応していくことだと言えます。
何故なら、もし手続きが遅れてしまえばそれだけで、従業員(被保険者)が将来受け取る年金などの金額が少なくなる可能性もあるからです。その場合、それが原因で事業主と従業員との間にトラブルが起こることも、ないとは言い切れません。
万一切り替え手続きの不備等で保険料の未納分が発生してしまった場合には、最大で2年間までならば遡って健康保険料や年金保険料を支払うこともできます。2年以上経過してしまっていても、場合によっては「時効消滅不整合期間にかかる特定期間該当届」申請の手続きを行うことで、保険料の未納期間を受給資格期間として算入できる可能性もありますので、お心当たりの方はすぐに諦めずに、ぜひ一度専門家へご相談ください。
クルーズ株式会社では、もちろん「健康保険被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者関係届」の届出をはじめ、各種保険や年金の申請、労務に関するご相談などを受け付けております。
専門の知識を持ったスタッフが、しっかりとお話しを伺い、適切なアドバイスをさせていただきますので、いつでもお気軽にご連絡ください。
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クルーズ株式会社(社会保険労務士・行政書士事務所)
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(監修:社会保険労務士・尾形達也)