療養補償給付の請求について

療養補償給の請求について

療養補償給付の請求は、業務上の事由により負傷した際、または疾病にかかった際に、「療養補償給付たる療養の給付請求書」を労災指定病院等に提出することで行います。

この請求書を提出し療養補償給付が認定されると、労災指定病院等における治療費、入院費等が無料になります。

そもそも療養補償給付とは

療養補償給付とは、労働保険制度における保険給付の一種です。

原則として現物給付であり、現物とは、各被災労働者が労災指定病院等で治療を受ける行為を指します。

参考までに、業務上の災害で受け取ることの出来る保険給付は、他にも以下のようなものがあります。

≪療養補償給付≫

  • 療養の給付 …… 業務上の負傷または疾病が発生した際、労災病院等にて、無料で診療を受けることができる(現物給付)こと。
  • 療養の費用の支給 …… なんらかの事情で療養の給付(現物給付)が困難な場合、または療養の給付を受けないことに相当な理由がある場合の、現金給付の制度。

≪休業補償給付≫

業務上の傷病で療養のために休業し、賃金を受けない日が4日目に及んだときの給付。

≪傷病補償年金≫

業務上の傷病が療養開始後1年6カ月経過しても治癒せず、傷病等級第1級~3級に該当したときの給付。

≪障害補償給付≫

業務上の傷病が治っても障害等級第1級~7級までの障害が残った時は年金で、第8級~14級までの障害が残った時は一時金で給付。

≪介護補償給付≫

障害補償年金または傷病補償年金の受給者の障害の程度が常時または随時介護を必要とする時に給付。

≪遺族補償給付≫

業務上の傷病で労働者本人が死亡した時、一定の範囲の遺族に年金で、または受給権者がいない時は一時金として給付。

≪葬祭料≫

業務上の傷病で死亡した者の葬祭を行った者に給付。

業務上の負傷の範囲について

療養補償給付を受けるためには、その負傷、あるいは疾病が業務上の事由によるものでなければなりません。

この、負傷・疾病の理由が業務であるという因果関係を「業務起因性」と言います。

一方、業務起因性を成立させるためには、「業務遂行性」についても認められなければなりません。

業務遂行性とは、労働者が対象の傷病を負った業務に就いていた際、当該労働者は労働契約において事業主の支配下、あるいは管理下にあったという前提の証明となります。

≪業務遂行性の主な3分類≫

①事業主の支配下にあり、かつ、管理下(施設管理下)にて業務に従事している場合

・担当業務、あるいは事業主の指示による特例業務に従事している時

・上記担当業務等を行うための準備行為中、後始末行為中(原則、トイレや飲水等の生理的行為は作業の一環に含まれます)

・その他、担当業務に従事するという本旨に対し、合理的であると認められる行為中

②事業主の支配下、あるいは管理下にあるが、業務には従事していない場合

・事業所内に滞在しての休憩時間中

・事業所附属の寄宿舎で生活している時

・事業主が通勤専用に提供している交通機関(送迎バス等)の利用中

・休憩時間中などに事業所施設を利用している場合は私的行為(業務外)となりますが、「施設の欠陥により」発生した事故等は業務上のものと判断されます。

③事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合

・出張中や業務での外出中(運送、配達、営業など)、事業所外で業務に従事している時

・事業所外での業務に付随する生理的行為や、その場所への往復の最中

※出張や業務での外出では、私用で寄り道をしているような特殊な場合を除き、住居または事業所を出発してから同じく帰り着くまでの全行程において業務遂行性が認められます。

上記の分類で説明すると、①と③に分類される負傷については、別段の理由がない限りは基本的に業務遂行性が認められることになります。

ただし、②に分類されるような場合では、事業所内で起こった事故であったとしてもそれが休憩中におけるあくまで私的行為によるものであれば、業務遂行性は認められません。

業務上の疾病について

療養補償給付の対象となる業務上の疾病について、その業務遂行性と業務起因性を判断することは、目に見えて明らかである業務上の負傷を判断するよりも、難しいと言えるでしょう。

特に一部の病気には、様々な原因や条件が少しずつ作用し合い発症するものもあり、その原因のひとつに業務が係わっているか否かを、明確に判断できることは稀です。

業務上の疾病の判断は、少なからず業務が疾病の原因足り得るからと言ってすぐさま認められるものではなく、相当の因果関係を立証し、医学上療養が必要であると判断されることで、はじめて療養補償給付の対象の疾病となるのです。

なお、「職業病」と呼ばれる疾病に関しましては、厚生労働省が公開している職業病リストが存在しますので、お心当たりの方はまずはこちらを確認してみると良いでしょう。

また、昨今ではパワハラ等のハラスメント行為や長時間労働などがきっかけとなって「うつ病」を発症し、療養補償給付をはじめとした労災を請求するケースも増えています。

しかしながら、このような精神疾患の場合は「業務による心理的負荷」「業務以外の心理的負荷」、そして労働者の「個体側要因」がそれぞれ作用し合い発病に至るものであるため、労災の認定については非常に慎重であると言えます。

とは言えなんの基準もない訳ではなく、平成23年12月に、厚生労働省、都道府県労働局、労働基準監督署の連名で発表された「精神障害の労災認定」においては、以下のような要件が挙げられています。

≪精神障害の労災認定要件≫

  • 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
  • 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

ここでいう「心理的負荷」の強度については、精神障害を発症した労働者がその出来事とその後の状況を主観的にどう受け止めているかではなく、同種の労働者(職業、職場における立場、職責、年齢、性別、経験等が類似する人)が一般的にどう受け止めるかという出来る限り「客観的」観点からの評価となります。

なお、発病した疾病が認定基準の対象となる精神障害か否か、その他、業務による心理的負荷の具体的な評価方法などにつきましては、厚生労働省のホームページで公開されている精神障害の労災認定をご確認ください。

提出についての詳細

≪提出先≫

労災指定病院等(を経由して、所轄の労働基準監督署)

≪提出期限≫

速やかに

≪添付・確認書類≫

特にありません

≪提出者≫

被災労働者

判断を仰ぐためにも、まずは請求書の提出を!

業務中における明らかな事故等を除けば、自分の傷病が業務上の傷病の範囲に含まれるのか否か、判断に迷ってしまう方もいらっしゃるでしょう。

しかしながら、軽度だと思って自費で治療に通った結果、最終的に想定より高額を費やしてしまうということもあり得えますので、労働災害が発生した際には、速やかに報告・請求を行うことが大切です。

また、事業主側には労働安全衛生法に基づく安全衛生管理責任を果たす義務があります。万一労働災害が発生してしまえば、当然ながらその責任を問われてしまうことになりますので、事業主様は普段から労働災害を防止するための安全管理に気を配りましょう。

とは言え、どれほど予防していても起こり得るのが事故や病気です。もしもの際にはしっかりと労働者が療養補償給付を得られるように、請求書の作成などでお困りの際には、ぜひお気軽にご相談ください。

クルーズ社会保険労務士・行政書士事務所では、療養補償給付の申請や労働災害時のご相談をはじめ、各種手続きの代行等、人事労務のサポート全般を承っております。従業員の入退社や出産、育児に纏わる手続きなども、労務の専門知識を持ったスタッフが迅速にご対応致しますので、ぜひお気軽にご相談ください。

また、クルーズ株式会社では、お客様のパートナーとして共に歩む顧問社労士のご相談も随時お受けしております。クルーズグループの代表でもある社会保険労務士が、社労士と経営者という二つの視点から各種サポートさせていただきますので、日々労務に関してお悩みの事業主様は、ぜひ一度ご相談ください。

お問合せ・お見積り・ご相談は無料です! お気軽にお電話ください。

クルーズ株式会社(クルーズ社会保険労務士・行政書士事務所)

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(監修:社会保険労務士・尾形達也)