専門業務型裁量労働制に関する協定届について

専門業務型裁量労働制に関する協定届とは

専門業務型裁量労働制に関する協定届とは、業務の性質上、遂行の手段や方法、時間配分等が労働者の裁量に委ねられる業務に従事する労働者、それを使用する使用者が労使間で締結する協定の届出のことを言います。

そもそも専門業務型裁量労働制とは

専門業務型裁量労働制とは、先述した通りその業務の性質上、遂行の手段や時間配分を労働者の裁量に委ねる必要があり、使用者がそれらに関して具体的な指示をすることが困難であると、厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務について、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使間であらかじめ定めた時間を働いたものとみなす、という制度のことです。

専門業務型裁量労働制の対象業務

2023年5月現在、対象とされているのは下記の19業務です。

① 新商品・新技術の研究開発等の業務

② 情報処理システムの分析または設計の業務

③ 記事の取材または編集の業務

④ デザイナーの業務

⑤ 放送番組・映画等のプロデューサーまたはディレクターの業務

⑥ コピーライター業務

⑦ システムコンサルタント業務

⑧ インテリアコーディネート業務

⑨ ゲーム用ソフトウエアの創作業務

⑩ 証券アナリスト業務

⑪ 金融商品開発業務

⑫ 大学における教授研究の業務

⑬ 公認会計士の業務

⑭ 弁護士の業務

⑮ 建築士(一級・二級建築士及び木造建築士)の業務

⑯ 不動産鑑定士の業務

⑰ 弁理士の業務

⑱ 税理士の業務

⑲ 中小企業診断士の業務

上記の業務に従事する労働者は、事業場の過半数の労働者が所属する労働組合、または過半数の労働者を代表する代表者とその使用者の間で、専門業務型裁量労働制の労使間協定を締結することができます。

労働者にとっての専門業務型裁量労働制のメリット・デメリット

専門業務型裁量労働制を導入することで、労働者は自らの裁量によって業務の遂行の手段、方法、時間配分を決定することができるようになり、自由度の高い働き方が可能となります。

具体的には、専門業務型裁量労働制では、基本的にどのような働き方をしても定められた時間を労働したものとみなされるため、遅刻、残業、早退、半休などの扱いがなくなり、自身のその日の体調やスケジュール、業務進行度に合わせて、早めに業務を切り上げたり、逆に長めに働くこともできるということです。

しかしこれは、逆に言えば一部の特例を除いて原則として残業という考え方がなくなるため、基本的に残業代が発生しなくなるということでもあります。

中にはその点を利用して、労働者への長時間労働が常態化してしまう例もありますので、その点にも注意が必要です。

なお、残業として割増賃金の発生する特例は以下の場合となります。

・22時以降翌朝5時までの間の労働

・法定休日の労働

とはいえ業務の効率化次第では、業務時間を短く最適化していくことも可能な制度ですので、モチベーションが高まることは間違いありません。

使用者にとっての専門業務型裁量労働制のメリット・デメリット

使用者にとって大きなメリットとなるのは、労働者のモチベーションや満足度の向上です。労働者のモチベーションが上がることによって、業務の効率化が捗り、結果的にパフォーマンスが上がることが期待されるからです。

その他、遅刻、残業、早退をはじめとした労働時間管理の負担が軽減されることも、メリットのひとつと言えます。対象業務に従事する労働者がおり、なおかつ不規則な労働時間の管理とそれにより煩雑になる会計に頭を悩ませている使用者には、最適な制度と言えるかも知れません。

一方、専門業務型裁量労働制の使用者側から見たデメリットの主たるものは、この制度を導入するための手続きの煩雑さ、決め事の多さにあります。

専門業務型裁量労働制の導入手続き

制度の導入にあたっては、まずは労使間で、以下の事項を協定により定める必要があります。

① 制度の対象とする業務

② 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと

③ 労働時間としてみなす時間

④ 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的な内容

⑤ 対象となる労働者からの苦情の処理のために実施する措置の具体的な内容

⑥ 協定の有効期間(3年以内とすることが望ましい)

⑦ ④及び⑤に関して労働者ごとに講じた措置の記録を、協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

なお、特に④⑤については、その内容を具体的にする必要があります。

ここでは例として、それぞれに望ましい措置を一部記載します。

≪健康・福祉措置について≫

・対象労働者の労働時間を正確に把握すること。(出退勤時刻の記録等)

・把握した対象労働者の労働時間・労働状況に応じて、特別な休暇や代償の休日を付与すること。

・健康診断の実施

・働きすぎ防止の観点から、年次有給休暇の取得については、そのまとまった日数の取得も含め、積極的に取得を推進すること。

・心とからだの相談窓口を設置すること。

・把握した対象労働者の労働時間・労働状況・健康状態に合わせて、必要な場合は適宜適切な部署に配置転換を行うこと。

・必要に応じて産業医等による助言、指導を受け、あるいは対象労働者へ受けさせること。

≪苦情処理措置について≫

・苦情申出の窓口及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順、方法等はあらかじめ明らかにしていること。

・苦情申出の窓口は、使用者や人事担当者以外の人間とすることで、対象労働者が苦情を申し出やすい仕組み作りをすること。

・取り扱う苦情の範囲については、対象労働者に適用される評価制度、賃金制度及びこれらに付随する事項に関する苦情も含めること。

なお、それぞれの措置を対象労働者が利用した際の、記録の取り忘れにはご注意ください。

提出についての詳細

本制度導入の際には、前項の各事項を定めた上で、専門業務型裁量労働制に関する協定届に必要事項を記入し、提出することになります。詳細については以下の通りです。

≪提出先≫

所轄の労働基準監督署

≪提出期限≫

協定を締結した都度(あらかじめ)

≪添付・確認書類≫

専門業務型裁量労働制に関する労使協定書

≪提出者≫

使用者

業務に合わせた労働制の導入で効率化を!

専門業務型裁量労働制は導入する際には定めなければならない事項や労使間で結ばなければならない協定も多く、大変に思われるかも知れませんが、それにより上がる労働者のモチベーションや業務の効率化を思えば、一考の価値のある制度と言えるでしょう。

加えて、導入の際の疑問や煩雑な手続きなどは、専門家を介することで格段に楽にすることができます。

クルーズ社会保険労務士法人では、専門業務型裁量労働制に関する協定届の作成はもちろん、その導入に伴う労使間協定の締結、適切な労働環境の整備にまつわるご相談やサポートなどを承っております。

貴社にとって最適な働き方を、多角的な視点から提案し、その実現に向けてお手伝いいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

また、各種申請の代行等スポットでのご契約の他、会社の労務全般に関してご相談いただくことのできる顧問契約も承っております。労務の専門知識を持ったスタッフがしっかりとお話をお伺いし、迅速に必要なサポートを行わせていただきます。

お問合せ・お見積り・ご相談は無料です!

クルーズ社会保険労務士法人(クルーズ株式会社)

電話番号:045-334-8240

(監修:社会保険労務士・尾形達也)